はじめに

このバーチカッターキットは、乗用型の装置に取り付けて使用する専門業務用の製品であり、そのような業務に従事するプロのオペレータが運転操作することを前提として製造されています。この製品は、集約的で高度な管理を受けている公園、スポーツフィールドや商用目的で使用される芝生にバーチカット作業を行うことを主たる目的として製造されております。この機械は本来の目的から外れた使用をすると運転者本人や周囲の人間に危険な場合があります。

この説明書を読んで製品の運転方法や整備方法を十分に理解し、他人に迷惑の掛からない、適切で安全な方法でご使用ください。この製品を適切かつ安全に使用するのはお客様の責任です。

製品の安全や取り扱い講習、アクセサリなどに関する情報、代理店についての情報の入手、お買い上げ製品の登録などをネットで行っていただくことができます:www.Toro.com

整備について、また純正部品についてなど、分からないことはお気軽に弊社代理店またはカスタマーサービスにおたずねください。お問い合わせの際には、必ず製品のモデル番号とシリアル番号をお知らせください。図 1にモデル番号とシリアル番号を刻印した銘板の取り付け位置を示します。いまのうちに番号をメモしておきましょう。

Important: シリアル番号プレートについている QR コード(無い場合もあります)をモバイル機器でスキャンすると、製品保証、パーツその他の製品情報にアクセスできます。

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この説明書では、危険についての注意を促すための警告記号(図 2)を使用しております。これらは死亡事故を含む重大な人身事故を防止するための注意ですから、必ずお守りください。

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この他に2つの言葉で注意を促しています。重要 は製品の構造などについての注意点を、はその他の注意点を表しています。

この製品は、関連する全ての欧州指令に適合しています。詳細についてはこの冊子の末尾にあるDOI(適合宣誓書)をご覧ください。

安全について

この機械は、EN ISO 5395: 規格およびANSI B71.4-2017 規格に適合しています。

安全に関する一般的な注意

この製品は手足を切断する能力がある。重大な人身事故を防ぐため、すべての注意事項を厳守してください。

  • 本機をご使用になる前に必ずこのオペレーターズマニュアルをお読みになり、内容をよく理解してください。

  • この機械を運転する時は常に十分な注意を払ってください。運転中は運転操作に集中してください;注意散漫は事故の大きな原因となります。

  • 作業場所をよく確認し、バーチカッターのブレードにはね飛ばされる危険のあるものはすべて取り除いてください。作業場所から人を十分に遠ざけてください。

  • 機械の可動部の近くには絶対に手足を近づけないでください。

  • ガードなどの安全保護機器が正しく機能していない時は、運転しないでください。

  • 排出口の近くに手足などを近づけないでください。

  • 作業場所に、無用の大人、子供、ペットなどを近づけないでください。子供に運転させないでください。

  • 運転席を離れる前に:

    • 平らな場所に駐車する。

    • カッティングユニット下降

    • 駆動系統をOFFにする。

    • 駐車ブレーキを掛ける(装備車の場合)。

    • エンジンを止め、キーを抜き取る。

    • 全ての動きが停止するのを待つ。

    • 刃が硬いものにぶつかったりユニットが異常な振動をしたりした場合は、 直ちに車両を止めてエンジンを停止し、バーチカッターに損傷が発生していないか点検してください。損傷や異常があれば修理を行い、修理が終わるまでは使用を再開しないでください。

    • ボルト、ナット、ねじ類などすべてを十分に締めつけ、常にバーチカッターの安全を心掛けてください。

間違った使い方や整備不良は人身事故などの原因となります。事故を防止するため、以下に示す安全上の注意や安全注意標識 Graphic のついている遵守事項は必ずお守りください 「注意」、「警告」、および「危険」 の記号は、人身の安全に関わる注意事項を示しています。これらの注意を怠ると死亡事故などの重大な人身事故が発生する恐れがあります。

カッティングユニットの安全確保

  • トラクションユニットに取り付けたカッティングユニットは、機械の一部となります。ですから、トラクションユニットのオペレーターズマニュアルもお読みになって、機械全体を安全に取り扱う方法を良く学んでください。

  • 異物をはね飛ばしたときや機体に異常な振動を感じたときにはまずマシンを停止し、キー付きのマシンではキーを抜き取り、各部の動きが止まってからよく点検してください。異常を発見したら、作業を再開する前にすべて修理してください。

  • 各部品が良好な状態にあり、ボルトナット類が十分にしまっているか常に点検してください。読めなくなったステッカーは貼り替えてください。

  • アクセサリ、アタッチメント、交換部品は、必ずトロの純正品をお使いください。

刈り込みブレードについての安全事項

磨耗の進んだブレードや破損したブレードは、回転中にちぎれて飛び出す場合があり、これが起こるとオペレータや周囲の人間に多大の危険を及ぼし、最悪の場合には死亡事故となる。

  • ブレードが磨耗や破損していないか定期的に点検すること。

  • ブレードを点検する時には安全に十分注意してください。ブレードをウェスでくるむか、安全手袋をはめ、十分に注意して取り扱ってください。ブレードは研磨または交換のみ行い、たたいて修復したり溶接したりしないでください。

  • 複数のブレードを持つ機械では、1つのブレードを回転させると他も回転する場合がありますから注意してください。

安全ラベルと指示ラベル

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危険な部分の近くには、見やすい位置に安全ラベルや指示ラベルを貼付しています。破損したりはがれたりした場合は新しいラベルを貼付してください。

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組み立て

Note: 前後左右は運転位置からみた方向です。

バーチカッターの点検

この作業に必要なパーツ

バーチカッター1

バーチカッターの梱包を解いたら、以下のことを確認してください:

  1. リールの両側にグリスが付いていることを確認する。リールシャフトのスプラインの内側に、目視でグリスを確認できることが必要である。

  2. ボルト ナット類にゆるみがないか点検する。

  3. キャリアフレームのサスペンションが自由に動くこと、特に、前後に揺れるときに引っ掛かりがないことを確認する。

移動用ローラを取り付ける

この作業に必要なパーツ

移動用ローラアセンブリ2
コッターピン2

コッターピンを使って、移動用ローラ・ブラケットを各サイドプレートのピンに固定する(図 3)。

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Note: ローラは、バーチカッターの後ろに取り付けます。

Oリングとグリスフィッティングを取り付ける

この作業に必要なパーツ

O リング1
グリスフィッティング(ストレート)1

バーチカッターのリールモータ側にグリスフィッティングを取り付けてください。図 4を参照して、各位置に配置されたバーチカッターのどちら側にリールモータを取り付けるかを確認する。

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  1. リールモータのサイドプレートの固定ねじを外す。ねじは廃棄する (図 5)。

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  2. グリスフィッティング(ストレート)を取り付ける (図 5)。

  3. リールモータのサイドプレートにボルトが付いていない場合は取り付ける (図 5)。

  4. リールモータにOリングを取り付ける (図 6)。

    Note: 図は電動モータ;油圧モータにも同じ作業を行う。

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ショルダボルトを取り付ける(RM5010 ハイブリッドのみ)

この作業に必要なパーツ

ショルダボルト5

リールマスター 5010–H にバーチカッッターを取り付ける場合には、リールモータ側のサイドプレートについているショルダボルト(図 7)とリールの接触を避けるために、新しいショルダボルトへの交換が必要です。

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エンドウェイト・キットを取り付ける(モデル 03618 のみ)

この作業に必要なパーツ

エンドウェイト・キット(別売)1

マシンに合ったエンドウェイト・キットを購入して取り付ける (図 8)。

  • 電動 リールモータ用にはウェイトキットモデル 03411

  • 油圧 リールモータ用にはウェイトキットモデル 03412

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バーチカッターは、全部で 5 つある取り付け位置のどこにでも取り付けることができます。図 5 のように、取り付け位置によって駆動モータの装着場所が変わりますから注意してください。バーチカットユニットの右側に油圧モータを取り付ける場合には、必ずユニットの左側にカウンタウェイトを取り付けます。ユニットの左側に油圧モータを取り付けた場合には、必ずユニットの右側にカウンタウェイトを取り付けます。

Note: モデル 03619は、バーチカッターの右側にカウンタウェイトを取り付けた状態で出荷されます。モータは、ユニットの左側についているボルトを使用して取り付けます。

バーチカッターを調整する

バーチカッターリールの取り付け

バーチカッターは、通常のカッティングユニットと同じようにトラクションユニットに取り付けます。取り付けについての詳細はトラクションユニットのオペレーターズマニュアルを参照してください。

リールモータを取り付けてサイドプレートからグリスを注入する。リリーフバルブからグリスが漏れてくるまで入れること;バーチカッターの潤滑を参照。

製品の概要

モデル純重量
03618エンドウェイトなし:
 49.4kg
 エンドウェイト(小)装着時(油圧モータ用):
 52.6 kg
 エンドウェイト(大)装着時(電気モータ用):
 55.8 kg
0361959.9kg

運転操作

トレーニング期間

バーチカッターリールを実際に使用する前に、希望する作業深さに設定して試運転を行い、仕上がり具合を確認してください。テスト用のエリアを作り、予想通りの仕上がりになるかどうかを確認してください。必要に応じて調整してください。

バーチカッターを調整する

ブレードの深さを調整する

Note: ブレードの深さの最大推奨設定値は以下の通りです:

  • モデル 03618 は3 mm

  • モデル 03619 は6 mm

  1. バーチカッターのリールを、平らな場所に置く。

  2. 希望する深さ(刃が地面に食い込む深さ)と同じ厚さのゲージバーを 2 枚用意し、ユニットの左右で後ローラとバーチカッターリールの下にあてがう(図 9)。

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    Note: バーチカッターのブレードがゲージバーに当たってはいけません。

  3. 各刈高ブラケットについている調整ボルト(図 9)を使って、バーチカッターの刃の両端を床に接触させる。

    Note: バーチカッターの刃が磨耗するにつれてリールの直径が小さくなってくるため、設定は徐々に変化します。希望通りの設定になっているかどうか定期的に調整を確認してください。

後グラスシールドを調整する

Note: 有機物の多いターフやサッチが非常に厚くなっているターフでは 後ろ側の排出口を開いてください。

  1. グラスシールドのピボットについているボルトをゆるめる(図 10)。

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  2. グラス・シールドを希望する高さに調節し、ボルトを締める(図 10)。

    注意

    後部シールドを開きすぎないこと。地表面と平行な状態より大きく開かないこと。

    異物が飛び出して人にけがをさせる恐れがある。

ローラスクレーパを調整する

  1. ローラスクレーパを固定しているフランジナットをゆるめる(図 11)。

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  2. スクレーパのロッドの位置を調整して、スクレーパとローラとの間に 0-0.75 mm のすき間を作る。

  3. スクレーパのロッドがローラおよび床面と平行になっていることを確認する。

  4. その後、フランジナットを締めて調整を固定する。

移動用ローラを調整する

整備場の床にバーチカッターを降ろすときやトラクションユニットから外して床に置く場合には、ブレードが床にあたって破損しないよう、必ず移動用ローラを降ろしてください(図 11)。

  1. 移動用ローラブラケットをサイドプレートのピンに固定しているコッターピンを外す。

  2. 移動用ローラを以下のようにセットする:

    • バーチカッターを床に降ろす前にローラブラケットを降ろす。

    • バーチカッターを床から作動位置まで上げてからローラブラケットを上げる。

  3. コッターピンを使って、移動用ローラブラケットをサイドプレートのピンに固定する。

  4. 同様の方法でユニットの反対側でも作業を行う。

運転のヒント

  • トラクションユニットにあるリール回転速度設定を最高速度(数字の9)にセットし、エンジンをフルスロットルとして、希望する走行速度で作業を行う。

  • ブレードの深さの最大推奨設定値は以下の通りです:

    • モデル 03618 は3 mm

    • モデル 03619 は6 mm

  • バーチカット作業にどの程度のパワーが必要かは、ターフや土壌の条件により変わります。場合によっては走行速度を下げる必要がでてきます。

  • 有機物の多いターフやサッチが非常に厚くなっているターフでは、前後の排出口を両方とも開いてください。

    注意

    異物が飛び出して人にけがをさせる恐れがある。

    リアシールドは、地面と平行よりも高く開けないこと。

保守

キックスタンドを使ってカッティングユニットを立てた状態にする

Note: バーチカッターを立てる場合には、必ずキックスタンド(トラクションユニットの付属品)をお使いください(図 12)。

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バーチカッターの潤滑

一週間ごとに、5ヶ所のグリスポイント(図 13)にNo.2リチウム系汎用グリスを注入します。

グリスポイントは、前ローラ(2ヶ所)、後ローラ(2ヶ所)、リールモータのスプライン(1ヶ所)です。

Important: カッティングユニットを水洗いした直後にグリスアップ作業を行うと、機械各部から水分を追い出してベアリングの寿命を延ばすことができます。

  1. グリスニップルの周囲をウェスできれいに拭く。

  2. ローラのシールやベアリングのリリーフバルブからきれいなグリスがはみ出てくるまでグリスを注入する (図 13)。

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  3. はみ出したグリスはふき取る。

ブレードをシャフトから取り外す

  1. バーチカッターシャフトの一方の端(ワッシャが 1 枚とナットが 1 個ついている側)を万力に固定する。

  2. シャフトの反対側についているナットを左回りに回し、ナットを取り外す。

    注意

    ブレードは非常に鋭利であり、バリなどがついていて手を怪我する恐れがある。

    シャフトからブレードを外す時には保護手袋を着用すること。

  3. 小さいスペーサ、ワッシャ、ブレード、大きいスペーサを外す。シャフトをきれいに洗い、次の組み立てに備えてシャフト全体に薄くグリスを塗る(図 14)。

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    Important: 分解は手順が非常に重要です。ブレードを取り外す際にブレードの順序を入れ替えたり、組み立てるときに逆順にしたりしないでください。各バーチカッターの刃についている合印(穴)の位置に注意してください。この目印穴は、組み立ての際にバーチカッターリールが「正しいらせん形状」になるように組み立てるためのものです。

バーチカッタのブレードを取り付ける

  1. ブレードを組み付ける (図 15)。

  2. 大きいスペーサを取り付ける。

  3. 組み付け時にブレードを裏返しにしないように注意すること。

    Note: 一部の刃を裏返しに取り付けてしまうと、使用中の(摩耗した)側と未使用の側が入り混じってしまい、よい仕上がりが得られなくなります。

  4. 次のブレードを右に 1/6 回転ずらして、つまり、合い印が面一枚分右にずれるようにして、取り付ける(図 15)。

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  5. 以上の手順を繰り返しながら、ブレードとスペーサを交互に、最後まで取り付けてゆく。

    Note: 正しく組み上がっていれば、リール全体がきれいにねじれた形状の円柱となる。

  6. 小さいスペーサをシャフトに取り付ける。

  7. ナットに青色ロクタイト #242 を塗る。シャフトにナットを (ナットの面取り面をスペーサに向けて)取り付け、109~135N·m (11.1~13.8kg.m = 80~100ft-lb) にトルク締めする。

標準以外のブレード間隔

ブレード間隔 13 mm(モデル 03618用)

バーチカッターのブレード間隔を標準(18 mm)から13 mm に変更するには、スペーサ(P/N 17-1580:34個)と、カーバイドブレード(P/N 106-6355:10枚)または通常のブレード(P/N 17-1590:10枚)を追加する必要があります(図 16)。

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ブレード間隔 25 mm(モデル 03619用)

バーチカッターのブレード間隔を標準(30 mm)から25 mmに変更するには、スペーサ(P/N 93-3092:19個)と、カーバイドブレード(P/N 106-8625:4枚)または通常のブレード(P/N 3038-03:4枚)を追加する必要があります(図 17)。

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ローラの整備

ローラの整備用として、ローラリビルドキット(Part No. 114–5430)およびローラリビルドツールキット(Part No. 115–0803)を販売しております(図 18)。ローラリビルドキットは、ローラの分解組み立てに必要なすべてのベアリング、ベアリングナット、内側シール、外側シールをセットにしたキットです。ローラリビルドツールキットは、ローラリビルドキットをつかってローラの再組み立てを行うのに必要な工具と説明書のキットです。詳細は、パーツカタログをご覧になるか、代理店にお問い合わせください。

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